懐古

昔々、個人の「ホームページ」というものが流行ったころ、ありがちなアイテムが「マイパソコン」だった。あのころはパソコンも高価だったから、ユーザーの思い入れもひとしおだったのだろう。どういう部品やソフトが入っているのかを事細かに解説している人が珍しくなかった。

今から約20年前のこと、私がマニアの親戚に頼んで組み立ててもらった最初のパソコンもそこそこ高価だった。仕事は会社から借りたOASYSのワープロ専用機で十分だったのだが、妻に「どうしても仕事で必要だから」と頼み込んで資金を出してもらった記憶がある。

そのパソコンのCPUは486SXの25MHzだった。いま私の会社の机の上にはパソコンが2台鎮座しているのだが、主に使っている右側のパソコンのCPUはたしかCerelonの2.5GHz。単純にクロック数だけを比較すれば、ちょうど100倍。メモリやディスクの容量もかなり余裕がある。

パソコンの高性能化とともに仕事の効率も上がったかというと、そんなには変わっていない。1.5倍くらいだろうか。いや1.2倍。冷静に考えれば、逆に効率が年々落ちているような気がする。私の老化というパソコンとかかわりのない理由もあるが、最大の転機はインターネットとつながってしまったことだろう。仕事をしていても、ちょっと集中力がとぎれるとニュースサイトに立ち寄ったり、ウィキペディアの樹海に迷いこみ、気がつくと1時間や2時間が経過していることがある。

「ネットで時間を無駄にしていなかったあの頃が懐かしい」ということで、「あのころ」のパソコンを再現してみた。それがいま、私の会社の机の左側を占めている。会社の倉庫の奥で忘れ去られていた1999年ごろの富士通のパソコンを引っ張り出してきて、IBM PC-DOS(いわゆるDOS/V)をインターネットのオークションで落札してインストールした。昔使っていたテキストエディタのVZも入れたいのだが、オークションでは思ったより高価なのでフリーのDOS用エディタを使っている。

問題はかな入力を漢字に変換する役割を担うFEPと呼ばれるソフト。PC-DOSに標準添付されているIBMのFEPはクセがあり使いにくい。昔は複数のメーカーがFEPを独自開発して販売していたのだが、ある会社は解散し、別の会社は大手に吸収されるといった具合で、もうどこにもない。唯一残っているのがジャストシステムのATOKだが、DOS/V用の古いバージョンを取り扱っているわけもない。オークションサイトで売りに出されていた「未開封のDOS/V用ATOK8」のお値段はなんと2万円。20年前のソフトにそこまで出すこだわりはない。

これは我慢しながらPC-DOSの標準FEPを使い続けるしかないかなと思ったら、詳しい人がFreeDOS日本語化の手順を手掛かりに、古いWindowsに含まれているFEPをPC-DOSに組み込む方法を教えてくれた。おかげで十分に仕事に集中できる環境ができた……という文章を早速、DOS環境で作成している(それをフロッピーで新しいパソコンに持って行ってからこのブログにUP)。

先日、DOSパソコンのほうが仕事の効率はいいという話をtwitterでつぶやいたら、「マルチメディア・パソコンは集中できないので仕事には適していない」と90年代の本に早くも書いてあったというご指摘をいただいた。単純なマルチメディアならまだいいが、ネットにつながったマルチメディアは手に負えない。日本人の労働時間は他の先進国と比べればまだまだ長いが、そのなかにはパソコンやネットのために無駄に会社にいる時間も含まれているはずだ。

「DOSパソコンで定時に帰宅しよう」という本を誰か書いたら、けっこう売れるのではなないか。私のようにDOSパソコンの環境を整えるまでに試行錯誤を繰り返し、貴重な週末をいくつか無駄にする人も現れるのは、まあ仕方ない。

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