脆腸

 5年ぶりに台湾に行った。気がついた最大の変化は、女性がきれいになったということ。化粧の技術が進歩したらしい。もう一つ、以前住んでいた場所の近くにあった歯医者が動物病院になっていて、「動物透析」の看板が出ていた。ここまでくるとペットが幸せなのか不幸せなのかわからない。

 本を買うため書店街を訪れた。大通りの向こうの細い路地の店で、約20年前に豚の腸を食べたことがあるのを思い出した。それまで私は内臓系がまったくダメだったのだが、一緒に行った人に薦められるままに恐る恐る食べてみたところ、プリプリとした歯ごたえが心地よく、その後は好んで内臓系のメニューを注文するようになった(レバーは今も苦手だが)。

 路地に入ると、その店はいまも営業してた。入り口で麺を頼み、サイドメニューとして「ツェイチャン」(脆腸、プリプリした腸、と書くのだと思う)をひとつ注文する。サイドメニューといっても、脆腸のほうが2倍くらい値段が高い。3分くらいして、ぶつ切りにした状態で茹でられ、千切りした生姜とトウガラシと調味料(醤油とオイスターソース?)とあわせた脆腸が出てきた。相変わらずのプリプリ感だが、腸自体は無味。生姜とトウガラシと調味料が味を担当している。日本人にとっては、この明確なパート分担感が物足りないかもしれない。

 その路地の入り口付近には、日本でいうアンカケ飯、むこうで言う「燴飯」を出す屋台があった。20年ほど前、この店のおやじがタオルで汗を拭いながら、よくこうこぼしていた。

 「暑いねぇ、ほんと暑い。毎日、汗流して働いているんだけどさぁ。まだクーラーは買えないんだよ」

 当時の私の中国語の能力で、「その前に壁と天井を買えよ」とつっこむことができたかどうか、よく覚えていない。

 麺と脆腸を食べたその帰り、アンカケ飯の屋台があったあたりに別の店が出ているのに気がついた。路地を覆う屋根に「ここにあった店はすぐ近くに移転しました」という地図付きの看板がぶら下がっている。路地をさらに奥に行った場所に、その店はあった。「汚かった店がきれいになった途端に美味しくなくなった」といった話をよく聞くが、そういう心配の必要がない感じの店だった。

 いまはどうか知らないが、昔はこういう店に出店するとき、前の店のオーナーに払う権利金も含めて、賃貸でも日本円に換算して数百万円が必要だったはずだ。まだ11時前で、店のおやじの姿は見えなかったが、相当な量の汗を流しながら、まとまった金額の金を溜め込んだらしい。

 早めの昼食はすでに食べてしまったし、列車の出発時間が迫っていたので、後ろ髪を引かれる思いで路地を離れた。その店でクーラーがしっかり効いているかどうかは、次の機会に確認したい。

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